お道具箱をもって、ちょっとそこまで。

わたしにとって「お道具箱」は、大人になった今でもずっと、心をくすぐられるアイテムのひとつです。

箱を開けただけで、なにつくろうかなとわくわくしたり、素敵な道具を見つけると、お道具箱に入れたくなったり。少しずつ手元に集まったお気に入りがぎゅっと詰まったお道具箱は、「さあ、つくるぞ!」という気持ちにさせてくれます。

ただわたしの場合、肝心の「箱」については、小学生の時に使っていたお道具箱(裁縫箱)を卒業して以来、様々な箱を転々としていました。

お道具箱にするために、かわいい缶に入ったお菓子を買ってみたりもしました。 けれど、お菓子の箱は、当たり前ですがお菓子を詰めるためにつくられているので、仕切りがなく、中でごちゃっとなってしまったり、数ミリの差で入れたい道具が入らなかったり、見た目はかわいくても、機能が追いつかず……。

とはいえ、機能性の優れた専用の収納ケースに乗り換えようとすると、気に入ったデザインがなかなか見つからなかったり、逆に仕切りが多すぎて使いにくかったり。なかなか「これだ!」と思うものに出会えずにいました。

ミーティングでそんなことを話していたら「じゃあ、つくってみたら?」ということに。

ゆるやかにスタートしたMIYUKI FACTORYのオリジナルお道具箱づくりは、新店舗の準備や日々の業務の合間を縫ってゆるゆると進み、この秋、ようやく完成したのでした。

この記事では、お道具箱ができるまでを、ご紹介したいと思います。

題して“どこでもお道具箱”

どんなお道具箱がよいのか、改めて考え始めてみると、

「手芸の種類によって、使う道具や素材も色々あるよね」
「手芸好きの人は、それぞれにこだわりのお道具箱をすでに持っているのでは?」

などなど、いろんな意見が出てきました。

そんなときにふと思い出したのが、上京する前に、友人に誘われてピクニックがてら外で手芸をした時のこと。青空の下、自然の空気を感じながらのものづくりは、想像以上に心地良かったのを覚えています。

最近では、飲食店等での滞在時間に制限はあるものの、少しずつ以前のように、喫茶店やカフェでものづくりをしている方を見かけるようになった気がします。

家の中でも、自分の部屋で作ることもあれば、居間でテレビを見ながら作業したり、実は道具を持って「移動する」場面がちょこちょこあるのでは……

そこで、好きな場所で手芸をたのしむためのお道具箱はどうだろうと、検討を始めました。

試作の山。分厚いボール紙をカッターで切って試作をするのは、地味に大変でした。

バンドいらずで、開け閉めらくらく。

持ち運ぶなら、ふたがカバンのなかで開かないようにしなくては。 けれど、ゴムバンドなどをつかうのは、それはそれで開け閉めが面倒。 狭いスペースだと、フタを置く場所に困るかも? などなど考えた結果、マグネットで開けられる、フタと箱が一体になったものにしました。

パタンパタンと開くこのフタ。なにげにお役立ちポイントがあるのです。

〈Point_1〉 ビーズマットを置いたり、貼り付けたり。

フタは、ぺたっと平らに開きます。 フタの上にビーズマットを置いたりして、作業することもできます。

ビーズマットをフタに貼り付けても、そのままふたを閉じることができるように、中の箱の高さをちょっとだけ低くしています。ビーズ手芸をたのしみたい方には、おすすめのカスタマイズです。

〈Point_2〉 マグネット部分が、簡易針置きに。

フタのマグネット部分に針を近づけると、ペタッとくっつきます。
ずっとそのまま置いておくのは良くないかもしれませんが、ちょっと針から手を離すときに、置いておくのに地味に便利。

針山はそこそこスペースを取るので、針山を持ち歩かずとも、針の置き場があるのって、持ち運びを考えると、実はありがたいポイントだったりするのです。

針落とし常習犯のわたしにとっては、この小さな機能がとても助かります……。

「紙」にした理由は、「音」でした。

お菓子の缶をお道具箱として使っていた時、気になっていたのが「音」でした。

歩くだけでもカタカタ。ちょっと走ったりすると、小学生のランドセルから聞こえてきそうなカチャカチャしたが鳴り響きます。

その点、紙の箱は音が良いのです。もちろん入れるものにもよりますが、ダッシュしても、コトコトと音がする程度。(実証済み!) 「音」が気になるのは、移動して使う用だからこそのポイントかもしれません。

個人的には、職人さんの手によってひとつひとつ作られた、紙箱の手触りも大好きです。

使い方を限定しすぎない、ここちよい包容力。

箱の中には、大小2つの箱が、2段に重なって入っています。人によって、入れたいものや使い方もさまざま。それぞれにあった使い方が選べるように、専用過ぎず、ただの箱過ぎない「いい塩梅」を探して試作を重ねた結果、大きさの違う薄型の箱を重ねて2段式にする、という形になりました。

はじめは、小さな箱がひとつ入っているだけのものを考えていました。 ただそれだと、下の段に入れたものが持ち運ぶ時に隙間から出てきちゃうかもね……ということに。それならばと、大きな箱だけにするかとも考えましたが、今度は高さのあるものが入れられない。

あれこれ試作した結果、たどり着いたのが「2箱入れちゃえ!」でした。

大きい方を上にして使うこともできます。

上に小さな箱を重ねると、高さのあるものをしまうスペースが生まれます。

上に大きな箱を重ねれば、下段に仕切りができるかたちに。

細々したものをしまうのに便利。大きな箱がフタの役割も果たすので、カバンに入れて移動しても、下段のものがでてきてしまうなんてこともありません。

中の箱をすべて取り出せば、シンプルな深めの箱として、使用することができ、こぶりな刺しゅう枠なら、そのまま入れて持ち運ぶこともできます。

ビーズクロッシェや、かぎ針編みなども、作品の大きさにもよりますが、作りかけをまるごと収納できちゃいます。

シンプルなつくりで、手にした人がそれぞれの手芸にあわせてカスタマイズできる。そんな箱を目指しました。

キュンするクラフト柄か、クールな無地か。

やっぱり、見た目は重要!
手芸好きの心をくすぐるかわいい箱もいいし、 飽きのこないシンプルな箱も捨てがたい。

結論から言うと……選びきれず、どっちもつくってしまいました。

クラフトモチーフのタイル柄

一見すると、シックなオリエンタル柄のように見えるのですが、 柄のひとつひとつをよ〜く見ると、ハサミやがま口の口金、ビーズなどでつくられているのです。

服のポケットの内側が柄布だったり、カーディガンの一番上のボタンだけ、糸の色がちがっていたり。そういうのを発見すると、なんだかうれしくなりませんか?

ぱっと見ではわからない部分のちょっとした遊びごころが、わたしとしてはたまらないポイントだったりします。この柄も、よくみたらかわいい! というところが、推しポイントです。

イラストは、「カラーパレット」のイラストも担当している、スタッフのいぐちに描いてもらいました。
チェコビーズやボタンなどを使った図案などもありましたが、MIYUKI FACTORYのお道具箱第一弾ということで、シードビーズがメインのものにしました。

大きさや余白、並べ方なども、いろいろと試作検討を重ねました。

飽きのこないモノトーン

「手芸」というと、かわいらしいものが多い印象ですが、スタッフの中からも「飽きのこないシンプルなものもいいよね」という意見もあり、モノトーンもつくりました。落ち着いたグレー系で統一された箱は、性別や年齢を問わず、幅広い方にお使いいただけたらうれしいなと思っています。

どちらも、箱の側面(片側)に、箔押しでMIYUKI FACTORYのロゴマークが入っています。反射によってうっすらと見えるマーク。このささやかさも、実はこだわりポイントです。

お気に入りを詰め込んで、気分を変えてちょっとそこまで。

ミーティングでの何気ない話から始まったお道具箱企画でしたが、どんなものがよいだろうと意見を出し合って、手芸についてあれこれ考える、とてもよい機会になりました。

いつもの作業スペースからちょっと抜け出して、好きな場所で手芸をたのしむ。そのお供に、この「どこでもお道具箱」を選んでいただけたなら、とてもうれしいです。

大学生の頃、クラスメイトから裁縫セットをプレセントしてもらったことがありました。ものづくりをする友人が周りにあまりおらず、手芸道具をプレゼントしてもらったのは初めてで、とても嬉しかったのを覚えています。

今度は、私が手芸好きの母へ、お道具箱をプレゼントしたいな~と、考えています。
どんなビーズや刺繍糸をつめようかな……

どこでもお道具箱

MIYUKI FACTORYのオリジナル「お道具箱」です。いつもの作業スペースからちょっと離れて、好きな場所で手芸をたのしむ。そんな時に便利な紙製のお道具箱です。

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しみず

このお道具箱を使っていただくことがありましたら「こんなふうに使ったよ」「これもって、どこどこ行ったよ」など、ぜひご感想を聞かせてください。「わたしはこんなお道具箱をつかっているよ」という情報も大歓迎! 皆さんと、お道具箱トークができたら、とてもうれしいです。