目からウロコが、ぽろぽろする本。

杉浦さんの作品を見たときに思いました。ビーズって、なんて自由なのだろうと。

初めて拝見したのは、青山の小さなギャラリー。そこに並ぶ作品には、普段目にしているビーズたちが、見たこともないようなかたちで使われていました。

ひとことでいうと、「立体」なのです。 スパンコールや大粒のビーズを使った「立体感」のある作品はこれまでにもみたことはありますが、絵画というより彫刻のような。正面から、横から、上から、斜めからと、あらゆる角度からたのしむことができる、そんな作品でした。

「え、どうなってるんだろうこれ……」
「わ、こんな風に使っていいんだ!」

 作品を見た時に感じた「驚きと発見」が、この本にはぎゅぎゅっと詰まっています。

本の冒頭には、杉浦さんの作品がちらり。

118種もの、パターン&モチーフ。

手に入りやすいシードビーズなどを中心に考えられた様々なパターンやモチーフが紹介されており、その数はなんと、118種類。図案の素敵さはもちろんですが、なんと言いますか、もう、アイディアの種がそこかしこに蒔かれているのです。

ということで、わたくし的ウロコぽろぽろ図案を、いくつかご紹介させていただきます。

ビーズが……ビーズが立ってる!

68 グランド・ヴィル(大都市)

ティラとハーフティラで、近代建築が立ち並ぶ大都市をイメージして作られたもの。正面(真上)から見ても、色面構成としてのカッコよさがあり、横から見ると、本当にビルが立ち並んでいるように見えます。

「平ら(たいら)」というところから名のついた「TILA(ティラ)」ビーズですが、立てて使ってもこんなに素敵だなんて……。

もうひとつポイントになるのが「糸もデザインのひとつ」というところ。こちらのモチーフ、ビーズに合わせて糸も黒だったら、ここまでの感動はなかっただろうと思うわけです。つい目立たないように共色を選びがちですが、ちらりと見える糸も含めたデザインをたのしむ。いいですよね。

ビーズにビーズを通すとは……

上:20 動くビーズ(横移動) /下:21 動くビーズ(縦移動)

この本を読んで初めて知りました。特大ビーズの穴に、スレンダービューグルが通るということを。そもそも「ビーズの穴にビーズを通す」という発想が、わたしにはありませんでした。

ほかにもないかと調べてみたら、マクラメの穴に、ロングビューグルが通るではありませんか。どちらも大き目のビーズなので、インパクトのあるものができそうな予感。ナイスアイディアが浮かんだ方は、ぜひお試しください。わたしも、何か作ってみよっと。

“触る”たのしみ

64 ヴィンテージ・ローズ

見てたのしむの次は、「触ってもたのしめる」モチーフです。 TILAビーズの2つある穴のうち、1つだけを縫い留めてあって、一番外側の花びらは、立てることも寝かせることもできます。

この立てたり寝かせたりを、存分にたのしめるモチーフがこちら。

70 ぱたぱた

これはもう、触りたくなっちゃいますよね。 一方向に揃えて、ランダムにあちこちに向けてと、動かすことで印象が変わる刺繍モチーフ。カバンやポーチなど、触れるものに仕立てたくなります。

海外のビーダーさんや、ビーズのお教室を主宰されている先生方には人気の高いTILAビーズですが、国内ではまだまだ「どうやって使ったらいいか、なやむ……」という声も。

かくいう私もそんなひとりですが、このモチーフを見て、両方の穴に通さなくてもいいんだと気づきまして。片穴だけ使って、ヒラヒラと動くようななにかを、仕立ててみたいなと考えているところです。

刺繍をしない人にも、この本を推せる理由。

刺繍をしない人にも、この本を推したくなってしまう理由があります。それは「読みもの」としてのたのしさです。

例えばこちら。「ビーズワードローブ」

それはお気に入りのファッションアイテムがつまったクローゼットのように、ビーズの小さなストックルーム、つまり自分だけの「ビーズワードローブ」を作ること。(中略)こうして見ると自分がどんなビーズを好んで使っているかがわかります。

本に掲載されているモチーフで使用しているビーズも、杉浦さんの「ビーズワードローブ」なのだそう。
こんな風に分解して整理してみると、自分でも気づかなかった「すき」が見えてきて、新たな発見になりそうです。

ビーズワードローブって、本棚とも似ている気がするのです。趣味嗜好や思考、さまざまな思惑が詰め込まれていて、「おもしろそう」と買ったきりそのままになっている「積ん読(つんどく)」的なものもあったり。見せるのは照れるけれど、人のは見たい! 色々な人のビーズワードローブ、見てみたいなあ……

ほかにも、本に掲載されている「スレンダービューグル」や「ツイスト」といったビーズの形状や、「ギョク」「スキ」といったビーズの加工のこと。杉浦さんが実際に使っている道具の紹介に、ビーズ刺繍の基礎や「これだけは守りたい大切なこと」など、そこまで教えてくださるのですか! という充実っぷりです。

掲載されているパターンやモチーフは、リュネビル針や縫い針を使った刺繍のものですが、刺繍以外の手芸をたのしむ方にも、きっと新たな発見があるはず。

実際私も、普段はピンワークやビーズステッチをたのしんでおりますが、ビーズってこんな自由に使っていいんだ! という気づきを得て、手元にあるビーズたちを、もっともっと活かしてみたいと思ったのでした。シードビーズを使ったものづくりが好きな方に、シードビーズをもっとたのしみたい方に、ぜひとも手に取っていただきたい、イチオシの1冊です。

ビーズセットを、7種ご用意しました。

掲載されているビーズをつくるためのビーズセットもご用意しております。バラバラで購入するよりも、お得なセットになっていますので、ご希望のモチーフのものがあれば、ぜひ。

「この色合い、素敵だな」と思った方は、ビーズセットを使って、普段自分が作っているものを仕立ててみても、新たな発見があるかもしれません。

記事で紹介した商品

オートクチュールのビーズ刺繍 

シードビーズを中心にしたパターンやモチーフが、たっぷり118種掲載されています。自分でデザインするときのヒントや、アイディアの種がぎゅっと詰まった一冊です。

商品詳細を見る

オートクチュールのビーズ刺繍 ビーズセット 

書籍に掲載されているパターンやモチーフに使用されているビーズセットをご用意しました。個別に購入するよりもお求めやすい価格になっておりますので、ぜひお試しください。

商品詳細を見る

この記事を書いた人

さかもと

カラフル大好き。本も好き。古本屋を巡っては、自分が生まれる前の書籍を読んで「変わったこと」「変わらないこと」をみつけてたのしんでいます。古い手芸本を見かけると、ついつい手にしてしまいます。